遺言書は、書き方ひとつで効力が変わります。
遺言書は、財産を誰にどう引き継ぐかを、あらかじめ自分の意思で決めておくための書面です。法律上の方式が細かく定められており、要件を欠くと無効になります。
当事務所では、公正証書遺言を中心に、財産と家族関係の整理、文案の作成、公証役場との事前調整を取り扱っています。以下では、遺言書の種類ごとの違いと、作成にあたって押さえておきたい基礎知識を整理します。
遺言書の種類と違い
一般的に使われるのは、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類です。
| 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
|---|---|---|
| 作成方法 | 全文・日付・氏名を自書し押印(財産目録はパソコン可) | 公証人が本人から内容を聴取し作成 |
| 証人 | 不要 | 2名必要 |
| 費用 | ほぼ不要(法務局保管は3,900円) | 公証人手数料(財産額に応じ変動) |
| 保管 | 自宅等または法務局(保管制度) | 原本を公証役場が保管 |
| 検認 | 必要(法務局保管の場合は不要) | 不要 |
| 無効となるリスク | 方式不備・内容の不明確さによる争いが起きやすい | 低い |
自筆証書遺言でよくある不備
- 日付が「令和◯年◯月吉日」となっている(特定できず無効)
- 財産の記載が「自宅」「◯◯銀行の預金」など曖昧で、どの財産か特定できない
- 加除訂正の方式が法律の定めと異なる
- 押印がない、夫婦連名で作成している(共同遺言は禁止)
法務局の自筆証書遺言保管制度
2020年に始まった制度で、法務局に自筆証書遺言を預けられます。紛失・改ざんを防げ、検認も不要になります。ただし法務局が確認するのは形式的な要件のみで、内容が有効か、実現可能かまでは審査されません。
遺言を書く前に確認しておくこと
遺留分
兄弟姉妹以外の相続人には、最低限保障される取り分(遺留分)があります。遺言でこれを侵害する内容にすること自体は可能ですが、侵害された相続人から金銭の支払いを求められる(遺留分侵害額請求)可能性があります。
遺留分の割合は、原則として法定相続分の2分の1です(相続人が直系尊属のみの場合は3分の1)。
遺言執行者
遺言の内容を実際に実現する人を、遺言書の中で指定できます。指定がないと、預貯金の解約などで相続人全員の関与が必要になる場面が出てきます。手続を円滑にするため、あらかじめ定めておく例が多くみられます。
付言事項
法的な効力はありませんが、なぜこのような分け方にしたのかという理由や、家族への言葉を記す部分です。分割内容に差がある場合、その理由が示されていることで、残された家族の受け止め方が変わることがあります。
書き直しは何度でもできる
遺言はいつでも撤回・変更が可能です。内容が抵触する遺言が複数ある場合、日付の新しいものが優先されます。家族構成や財産が変わったタイミングで見直す性質のものといえます。
公正証書遺言の作成手順
- 財産の内容と推定相続人を整理する
- 分け方を決め、文案にまとめる
- 戸籍、登記事項証明書、固定資産評価証明書など必要書類を集める
- 公証役場に文案と書類を提出し、公証人と内容を調整する
- 証人2名とともに公証役場へ出向き、署名・押印する(公証人の出張も可能)
証人には、推定相続人やその配偶者・直系血族などはなれません。
よくあるご質問
財産の価額と、財産を受け取る人の人数に応じて算定されます。目的財産の価額が1,000万円を超え3,000万円以下の場合で29,000円が基準です。加えて、全体の財産額が1億円以下のときは11,000円が加算されます。
相続人全員と受遺者が合意すれば、遺言と異なる内容で分割することも可能です。ただし遺言執行者がいる場合は、その同意も必要と解されています。
診断名だけで一律に判断されるわけではなく、遺言の内容を理解し判断する能力(遺言能力)が作成時にあったかどうかで決まります。争いを防ぐため、医師の診断書を残したうえで公正証書によって作成する例があります。